家族信託の方法や必要書類は?

2023年11月09日

前回の記事では、家族信託とはどういうものか、そしてメリットとデメリットについて解説しました。

 

今回は、家族信託の手続きの流れや必要書類についてお伝えします。

 

前回の記事とあわせて読んでいただくと、家族信託について詳しくなれますし将来のことをより深く考えることができるでしょう。

 

 

||手続きについて||

 

家族信託には、様々な人がその契約に関わるため、多くの手続きが必要です。

 

これらの手続きを順に進めていかなければ、家族信託を有効に始めることはできません。

 

また、それぞれの手続を進めるうえでは、注意しなければならないポイントもあります。

 

どのような手続きを行う必要があるのか、その順番に確認していきます。

 

 

 

家族信託の目的を決める

 

家族信託は、どのような目的であっても、基本的には自由に利用ができるため、委託者が何のために利用するのかをあらかじめ決めておきます。

 

例えば、軽度の認知症となった委託者が、財産の運用を子どもに任せたい、というのもひとつです。

 

家族信託を利用すると、自身の財産を積極的に活用する権限を受託者に付与し、その財産を活用して収益を得られるようにすることができます。

家族信託の目的を明確にしておくことで、委託者と受託者の考えに相違なく、契約書の作成もスムーズに進められます。

 

また、専門家に委託することもできますが、この場合も同じく目的をはっきりとさせておく必要があります。

 

 

 

信託契約書の作成

 

信託契約は、委託者と受託者との間で締結される契約です。

 

家族信託の内容は複雑で様々な形があり、また長期間にわたる契約になることも想定されるため、契約書を作成しておく必要があります。

 

またこの時、契約書を公正証書により作成するのが一般的です。

 

信託契約書を公正証書とするのは、次の手続きである信託用口座の作成にあたって、銀行に公正証書の信託契約書の提出が求められることがあるためです。

 

また、契約書を公正証書とすることで、公証人により契約書を作成してもらうことができ、より証拠能力が高くトラブルになりにくいものとすることができるのです。

 

専門家に家族信託を依頼する場合、契約書の作成や信託契約に関する法的な問題点がないよう、専門家に依頼することができるため、より安心して契約を進めることができます。

 

 

 

信託登記や信託用口座を作成

 

家族信託を行うため、対象となる信託財産に関する手続きが必要となります。

 

信託財産に不動産が含まれている場合は、その不動産の登記名義を委託者から受託者に移転しなければなりません。

 

家族信託を行う場合、委託者から受託者に不動産の所有権が移転する形となり、同時に信託登記を行います。

 

こうすることで、受託者が不動産の管理を行うことができるようになるのです。

 

また家族信託の受託者は、信託財を自身の財産とは分離して管理する事が必要です。

 

そのため信託口座を金融機関で開設する必要があります。この時に信託契約書が必要となるため準備しておきましょう。

 

 

中には、公正証書による信託契約書が必要とされる金融機関もあるため、事前に確認しておく必要があります。

 

なお、専門家に家族信託に関する手続きを依頼している場合は、登記などの手続きを代行してもらうことができます。

 

登記や口座の開設を終えて、ようやく受託者は信託財産の管理を始めることができます。

 

 

 

||家族信託にかかる費用||

 

家族信託は基本的に委託者と受託者の契約によって成立します。

 

契約内容は契約書として書面で残し、不動産の名義移転については登記を行うのが通常ですから、以下のような費用が発生します。

 

 

・印紙税:契約書1通につき200円

・不動産の登記を行う場合には登録免許税

・専門家に依頼する場合、専門家に対して支払う報酬費用

・公正証書による場合、作成費用

 

 

また、信託契約は必ずしも公正証書による必要はありませんが、家族の1部が受託者や受益者となるような場合には別の家族から不満が生じないように公正証書によって信託契約の内容や日付を確定しておくことが望ましいです。

 

なお、自己信託による場合には公正証書によって信託宣言書を作成しますので、必ず公証人に対して手数料を支払わなければなりません。

 

公正証書の作成費用は信託の対象とする財産の価額によって異なり、例えば財産の価額が100万円以下の場合は手数料は5,000円ですが、例えば財産価額が5,000万円の場合には4万3,000円と変わります。

 

なお、家族信託は営利を目的とする行為ではありませんので、受託者への報酬は必ずしも必要ではありません。

 

しかし、契約書の作成は弁護士や司法書士、不動産登記の手続きは司法書士の協力が必要になるのが普通ですから、これらの専門家に対して支払う手数料についても考慮しておきましょう。

 

 

 

||家族信託を行う際の注意点・相談者は誰か||

 

家族信託の契約は、法律にあまり詳しくない人にとっては少々分かりにくい面がありますし、何十年も信託契約が続くこともあるため、数十年先まで見通す必要があります。

 

家族信託の手続きや契約内容を自分で考えるよりも、専門家の力を借りたほうが、今後のためにも安心です。

 

専門家を選ぶ際は、家族信託についてよく勉強している専門家を選びましょう。

 

家族信託について相談する際、家族信託契約の書類の作成などの相談は行政書士、土地や建物、会社などの登記についても相談したいときは司法書士、様々な争いも視野に入れておきたいときは弁護士に相談するといいでしょう。

 

 

 

今回は、近年相続対策の方法として注目されている家族信託の内容や手続き方法について解説しました。

 

家族信託は信託契約の内容によって当事者の意思が適切に実現できるかどうかが決まりますから、信託契約の設計の時点で契約当事者となる人に積極的に参加してもらうことが重要です。

 

実際に家族信託を利用される際には、司法書士や弁護士といった法律家からアドバイスを受けるようにしましょう。