非課税枠2500万円の相続時精算課税制度

2023年11月17日

|| 「生前贈与で非課税枠2500万円」の制度とは?||

 

今回は、生前贈与で使える非課税枠がいくつかあるうち、まずは2500万円までの生前贈与の贈与税が非課税となる「相続時精算課税制度」について説明します。

 

 

相続時精算課税制度とは

 

原則、60歳以上の父母や祖父母(贈与者)から18歳以上の子や孫(受贈者)に対して、財産を贈与した場合において選択できる贈与の制度です。

この制度は、相続時精算課税選択届出書を税務署へ提出した贈与者と受贈者間の贈与財産が累計2500万円になるまでは、贈与税がかかりません。

累計が2500万円を超えた場合は、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。


1月から12月までの暦年課税による贈与は、贈与税の非課税枠が年間110万円のため、一度に多額の財産を贈与すると多額の贈与税が課税されます。

しかし、相続時精算課税による贈与を活用することで、スムーズに財産を移転することができます。

そのため、この制度を活用することで以下のようなメリットがあります。

 

 

相続時精算課税制度のメリット

 

以下のようなメリットが考えられます。

・相続時の争いが防止できる

・値上がりが確実な財産の場合は相続税の節税になる

・収益性のある財産であれば収益の分だけ相続税の節税ができる

 

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

 

① 相続時の争いが防止できる
生前に財産を贈与すると、贈与者が亡くなったときに遺産分割協議の対象から除外できます。

特に相続時精算課税による贈与の場合、多額の贈与をしても贈与税は少額に抑えることができる可能性があるため、特定の子や孫に渡したい不動産や株式などがある場合、相続時精算課税による贈与は有効です。

 

② 値上がりが確実な財産の場合は相続税の節税になる
相続時精算課税により贈与した財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産の課税が必要です。

ただし、この加算する金額は贈与時の時価になります。そのため、贈与後にその贈与した財産に値上がりが生じた場合でも、贈与時の時価で相続税を計算することができます。

不動産や株式など時価の変動が生じるような財産の場合は、今後値上がりが確実であれば相続税の節税につながる可能性があります。

 

③ 収益性のある財産であれば収益の分だけ相続税の節税ができる
賃貸不動産や配当の利回りがよい株式など収益性がある財産の場合、早期に贈与することにより、父母や祖父母が健在の時から、不動産や株式から得られる賃料や配当金を子や孫が得ることができます。

そのため、贈与者は不動産や株式から得られる現預金の増加を抑制することができます。現預金も贈与者が亡くなったときには相続財産になるため、収益の分だけ相続税の節税になるのです。

 

 

 

相続時精算課税制度の注意点

 

これを活用する場合、いくつか注意すべき点があります。

 

・届出書の提出を忘れてしまうと贈与は暦年課税になる

・一度選択すると暦年課税に戻れない

・年間110万円以内の贈与でも申告が必要

・贈与税の節税にはなるが相続税の節税効果は薄い

 

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

① 届出書の提出を忘れてしまうと贈与は暦年課税になる
相続時精算課税制度を選択する場合、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに相続時精算課税選択届出書と一定の書類を添付した贈与税の申告書が必要です。

そのため、最初に贈与を受けたときにこの届出書の提出を忘れてしまった場合、贈与は暦年課税となってしまいます。

たとえば、2000万円の贈与を行った際に、相続時精算課税選択届出書を提出していれば贈与税は0円になりますが、提出を忘れてしまうと、585.5万円の贈与税(特例贈与の場合)が課税されてしまいます。

 

② 一度選択すると暦年課税に戻れない
相続時精算課税制度を一度選択すると、その年以降のその選択に係る贈与者からの贈与は相続時精算課税制度が適用され、暦年課税による贈与に戻ることができません。

そのため、前年以前にすでに2500万円の相続時精算課税の贈与を受けている場合、100万円の贈与を受けても常に20%の贈与税が課税されます。

 

③ 年間110万円以内の贈与でも申告が必要
相続時精算課税制度を選択している場合、年間110万円以内の贈与であっても贈与税の申告が必要になります。

 

④ 贈与税の節税にはなるが相続税の節税効果は薄い
相続時精算課税制度の贈与者が亡くなった時の相続税の計算は、贈与者の相続財産にこの制度を使って贈与した財産を加算して計算することになります。そのため贈与税の節税にはなりますが、相続税の節税効果は薄くなります。

 

 

 

2023年の税制改正で「年110万円の基礎控除」も

 

2500万円の特別控除とは別に、年間110万円までの基礎控除が認められることになりました。

適用は2024年1月の贈与からです。

相続時精算課税制度を選んでいても、年間110万円までの贈与であれば贈与税の申告が不要で贈与税もかかりません。

 

つまり、年間110万円以下の贈与であれば、贈与税がかからず、累計2500万円の特別控除に含める必要がなくなります。

さらに、年間110万円までの贈与財産は、相続の際に相続財産に加算する必要がないので、相続税もかかりません。

 

以上のように、新しい相続時精算課税制度は多くの人にとって使いやすくなりました。

生前贈与を検討する際の選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。