節税対策ができない?政府の新ルールと影響
2026年02月20日
2024年1月に、政府が「タワマン節税」と言われる是正措置が導入し、不動産を活用した相続税対策に衝撃が走りました。
その後、程なくして新たな節税封じの方針が打ち出されています。
今回の記事では、今後の不動産評価がどう変わるのかをできるだけ分かりやすく解説していきます。
||制度改正の概要||
今回、ターゲットになったのは「相続開始直前に購入した不動産」と「不動産小口化商品」の評価方法の見直しです。
目的は、従来の路線価を用いた評価方法と、実際の購入価格に生じる乖離を利用した節税策を防止するためです。
①「購入後5年以内」の相続は取得価額ベース
今までは、土地建物の相続税評価額は、国税庁が定める「路線価」や「固定資産税評価額」を基に算出されてきました。
賃貸物件の場合は、そこからさらに借地権割合などが控除されるため、現金で持っている場合に比べて評価額を大幅に圧縮することができていました。
今回の改正案では、「購入から5年以内の相続」については、原則として「購入時の価格(取得価額)」をベースに評価する方式へ改められる見通しです。
計算式は以下のように調整が進められています。
新評価額の目安=購入時の価格×地価変動率×0.8(2割控除)
どういうことかというと、購入価格から無条件に路線価評価へ下がるのではなく、購入価格から2割程度引いた金額までしか評価が下がらないことになります。
例えば、「1億円で買った物件が、相続税評価額では3,000万円になる」といった劇的な節税効果は購入後5年間はないということです。
②不動産小口化商品の「抜け穴」を完全封鎖
「不動産小口化商品」とは、都心のオフィスビルなどを数十億単位でプロが購入し、それを1口数百万円〜数千万円単位に小分けにして投資家に販売するものです。
これまでは、小口化商品であっても実物不動産と同様に路線価等で評価できたため、購入時期にかかわらず大きな評価減メリットがありました。
一般不動産では「5年」という期間制限がありましたが、この小口化商品は「購入時期に関わらず」実際の取引事例を基にした時価ベースで相続税を算定する手法へ切り替える予定です。
小口化商品はさらに厳しくなり、商品特有の節税メリットそのものにメスが入ります。
||改正の背景・タワマン節税との関係||
なぜこのような改正が行われるのでしょうか。
その背景には、国税当局が長年問題視してきた「税の公平性(租税負担の公平性)」の確保があります。
これまでは、相続直前に借金をして購入し、直後に売却するなどの露骨な節税行為に対して、通達(総則6項)を用いて、個別に否認してきました。
これでは法的安定性を欠くという問題があったため、明確なルールを設けることで、誰に対しても公平にしようという方針に転換したのです。
2024年1月から施行された「居住用マンションの評価見直し」は、市場価格と評価額の乖離率を用いて評価額を補正する仕組みでした。
しかし、このルールは「居住用の区分所有マンション」が対象であり、一棟アパートやオフィスビル、商業施設などは対象外。
今回の改正案は、まさにその「残された抜け穴」を塞ぐものです。
タワマン規制を受けて資金の逃避先となっていた「一棟もの」や「小口化商品」に規制をかけることで、不動産を活用した租税回避を無くそうとしています。
||納税者への影響は||
この改正が2026年度税制改正大綱に盛り込まれ施行された場合、オーナーの経営判断にも大きな影響があります。
もしも、「親が亡くなったが、契約書が見当たらない」「購入価格の内訳(土地・建物・消費税)が不明」といった場合、評価額の算定根拠を出すのが難しくなり、納税者にとっても、証憑書類の管理がこれまで以上に重要になります。
また、駆け込みの相続対策を行おうとしても、税制面での効果はほとんどありません。
購入後5年以内に相続が発生すると、高い購入価格で課税されるため、むしろ現金で持っていた方が納税資金として使いやすかったということもあり得ます。
||5年ルールを見越した長期計画へ||
不動産による資産承継効果が完全になくなるわけではありません。
「購入後5年」を経過すれば、従来通りの路線価評価が適用される可能性が残されています。
慌てて対策をするのではなく、元気なうちから資産の組み換えを行い、5年、10年と長期保有する。こうした王道の承継計画のみが、確実な効果を生みます。
いかがでしたか。
「税金が安くなるから買う」というというのは、今後は非常に危険な判断です。
たとえ評価額が購入価格ベースになるとしても、その不動産自体がしっかりと賃料を生み出し、将来も値下がりしにくい有料物件であれば、資産防衛の価値は十分にあります。
節税効果はさておき、純粋な投資として、その物件が魅力的かどうかをみていきましょう。
また、小口化商品を保有している方は、もし節税メリットのみを目的として保有しているのであれば、売却や贈与などの見直しも検討しておくと良いでしょう。
少しでも参考になれば幸いです。
