相続した不動産を売却する8つの注意点

2023年05月01日

前回の記事では、相続した不動産を売却したときの流れや分割方法、名義変更と必要書類について基本的なことについて述べました。

 

今回はその続編として、相続した不動産を売却する際の注意点について書いていきます。

 

 

計8点について解説していきます。

 

 

1.スムーズに高値で売却してくれる不動産会社を探す

2.共有名義の売却は全員の同意が必要

3.単独登記型は贈与にならないようにする

4.親の家に「住む場合」と「住まない場合」では税金特例が異なる

5.売却期限は3年以内が目安

6.取得費は親の購入金額を引き継ぐ

7.所有期間は親の購入日を引き継ぐ

8.取得費が不明の場合は代替資料を探す

 

 

各項目ずつ見ていきましょう。

 

 

 

1.スムーズに高値で売却してくれる不動産会社を探す

 

これが1番の重要点です。

 

相続した不動産は「相続税の納税」や「特例を使える時期」に期限があります。

期限内にスムーズに売却するには、売却に慣れた不動産会社に依頼することがポイントです。

 

一般的に不動産会社といっても、特化しているものがいろいろあります。例えば「賃貸仲介を主な業務」としていたり、「売買の購入者を主なお客様として業務」をしているなど様々です。

会社により特性が異なるため、どの会社が相続の不動産売却に強いのかを調べる必要があります。

 

複数の不動産会社を探したら、各社に売却査定を依頼し、電話やメールで問い合わせるだけではなく必ず担当者に会うことをお勧めします。

担当者の対応を見て、その担当者に任せられるか、売却にどのくらい力を入れている等を確認の上、良い不動産会社を選びましょう。

 

 

 

2.共有名義の売却は全員の同意が必要

 

ここでのポイントは「売ること自体に同意」と「売却する金額の同意」の2つです。

 

売ること自体に全員の同意が得られたら、次は価格の同意が必要です。

価格の同意を得るためのポイントは、共有者全員で最低売却価格を決めておくことです。「いくら以上なら売る」と共有者全員で最低ラインを決めておくことで、例えば購入希望者から値引き交渉があった場合にスムーズに意思決定がしやすくなります。

 

 

 

3.単独登記型は贈与にならないようにする

 

不動産を売却し、現金で分割する換価分割には、共同登記型と、単独登記型の2種類があります。

 

共同登記型…一旦、不動産を共有で持ち、共有のまま売却する方法のことです。分割の仕方は、法定相続を選択

 

単独登記型…一旦、不動産を特定の相続人が単独所有し、特定の相続人が売却した後に、そのお金を他の相続人に分配する方法のこと。分割の仕方は、遺産分割協議を選択

 

共同登記型は共有物件の売却となるため、売買契約時に原則として共有者全員の立ち会いが必要になります。もしもそのうちの一人が海外に住んでいる場合は、不都合が生じます。

 

単独登記型は単独所有物件の売却となるため、所有者本人だけで売却手続きを進めることができます。意思決定もスムーズにでき、相続人が遠方に住んでいる場合は、単独登記型は便利です。

 

ただし、何も対策をせずに単独登記型で売却すると、所有者が受け取った現金を他の相続人に配分すると贈与とみなされてしまいます。

 

ここで必要なことは、単独登記型でお金の配分が贈与とみなされないために、遺産分割協議書に換価分割目的で遺産を取得することを明記しておくことです。

遺産分割協議の時点で売却方法と分割方法をセットで決めておきましょう。

 

 

 

4.親の家に「住む場合」と「住まない場合」では税金特例が異なる

 

親の家の住む場合と、住まない場合では税金特例が異なります。

相続した親の家に、相続人(売主となる子供など)が住むと利用しやすい複数の特例があるため、売却時の税金を節税しやすくなります。それに対して、相続した親の家に相続人が住まいにと利用しにくい特例しかないため、売却時の税金が節税にしにくいという特徴があります。

親の家に引き続き子供が住み、その家を売却する場合の扱いは、マイホームの売却と同じです。

一定の要件を満たすマイホームの売却では、以下の5つの特例を利用できる可能性があります。

 

詳細に関しては、国税庁のHPのリンクを貼っておきます。

 

3,000万円特別控除

 

所有期間10年超えの居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例

 

特例の居住用財産の買い換え特例

 

居住用財産の買い換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

 

居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

 

※居住用財産とはマイホームのことです。

 

また、一方で相続した親の家に相続人が住まない場合、以下の2つの特例が利用できる可能性があります。

 

・取得費加算の特例

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

 

・相続空き家の3,000万円特例控除

被相続人の居住用財産を売ったときの特例

 

なお、国税庁は、居住用財産の特例を利用できない場合として、以下のケースを挙げています。

 

・この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋

・居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋

・別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋

 

 

 

 

5.売却期限は3年以内が目安

 

注意点としては、相続した不動産の売却期限は3年以内が目安となることです。

理由としては、相続不動産で利用できる2つの特例の期限は、主として3年を目安としているからです。

 

・取得費家さんの特例

適用期限:相続開始のあった日の翌日から相続税の申告限の翌日以後3年を経過する日までに売却(相続開始のあった日の翌日から3年10ヶ月以内)

 

・相続空き家の3,000万円特別控除

適用期限:相続の開始のあった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却

 

上記の2つの特例の期限は多少差があり、3年を少し過ぎても間に合いますが、不動産の売却には名義変更から引渡しまで半年以上の時間がかかります。

3年を過ぎたらすぐに期限が来てしまうため、まずは3年以内を目指して売却ましょう。

 

 

 

6.取得費は親の購入額を引き継ぐ

 

相続不動産の取得費は、親の購入額を引き継ぐという点が注意点です。

個人が不動産を売却したときは、譲渡所得を計算します。譲渡所得とは、以下の計算式で求められます。

 

譲渡所得=譲渡価格ー取得費ー譲渡費用

 

譲渡所得:売却益

譲渡価格:売却価額

取得費:土地について胃は購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額

譲渡費用:仲介手数料や印紙税など、売却に要した費用

 

相続した不動産を売却するには、まずは親が不動産を購入した時点の売買契約書を探し出すことから始めましょう。

 

 

 

7.所有期間は親の購入日を引き継ぐ

 

譲渡所得が発生した場合、税金は譲渡所得に税率を乗じて求められます。

 

税金=譲渡所得×税率

 

税率は所有期間によって異なります。

売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超えの時は「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下の時は「短期譲渡所得」と呼ばれます。

 

長く所有している長期譲渡所得の方が税率が低く、節税ができます。また、所有期間は親の所有期間を引き継ぐため、例えば親がすでに所有期間を5年超えていれば、相続後にすぐに売却しても長期譲渡所得の税率が適用されます。

 

 

短期譲渡所得

所得税率:30%、住民税率:9%

 

長期譲渡所得

所得税率:15%、住民税率:5%

 

 

 

 

8.取得費が不明の場合は代替資料を探す

 

取得費が不明というケースもあるでしょう。

その場合は概算取得費というものを用います。概算取得費とは「譲渡価額の5%」です。

概算取得費を用いると、取得費が小さくなるため、譲渡しょ徳が大きく計算されてしまい税金が高くなってしまいます。

 

そこで、取得費が不明な相続不動産の売却で節税するには、取得費を証明する代替となる資料を探します。

 

取得費の代替になる資料としては、以下のようなものがあります。

 

・新築物件の場合、当時の販売会社から、購入当時の売買契約書の写しをもらう

・当時仲介してくれた不動産会社や売主から、購入当時の売買契約書の写しをもらう

・通帳の出勤履歴から購入額を推測する

・住宅ローンの金銭消費貸借契約書から購入額を推測する

・抵当権設定額から購入額を推測する

・一般財団法人日本不動産研究所が公表している市街地価格指数から土地の取得費を算定する

・一般財団法人建設物価調査会が公表している着工建築物構造別単価から建物の取得費を算定する

 

あらかじめ税務署に相談しておくと良いでしょう。

 

 

以上で、相続した不動産を売却する8つの注意点をお伝えしました。

前回の記事の「相続した不動産を売却する手順・必要書類」と合わせて、ぜひ参考にしてみてください。