相続税とは?基礎控除や計算方法を解説

2025年05月03日

相続税という言葉を知っていても、具体的な計算方法や税率を知らない方も多いのではないでしょうか。

 

例えば、相続税の基礎控除は、相続人の人数によって控除額が変わります。

 

適用するための要件は特にありませんが、相続人の数え方が相続税特有なものとなっている点には注意が必要です。

 

今回は、いざ相続が発生してから困る前に、相続税の仕組みを分かりやすく解説します。

 

 

 

||相続税とは||

 

 

相続税は、被相続人(亡くなった人)の財産に対して課される税金です。

 

相続財産が多い人ほど相続税の税率は高くなり、相続人は相続財産を取得した割合に応じて相続税を納めます。

 

 

 

相続税の仕組み

 

相続税が発生するケースでも、相続財産を1円も取得していないという場合は、相続財産の取得割合はゼロです。

 

相続税を納める必要はありません。

 

また亡くなった人のうち、相続税の課税対象となる割合は全体の8.3%です。

 

都心部になると相続税の課税対象割合は高くなり、東京国税局管内(東京都・千葉県・神奈川県・山梨県)の課税割合は13.1%と、亡くなった人の8人に1人は相続税の課税対象となっています。

 

 

 

 

||相続税の基礎控除とは?計算方法と優先順位||

 

 

相続税の基礎控除

 

相続税の基礎控除とは、被相続人の財産から差し引くことができる金額です。

 

相続財産の総額が基礎控除額以内であれば、相続税の課税対象財産はゼロとなるため、相続税の納税金額はゼロです。

 

また基礎控除額は、被相続人の財産全体から差し引かれるものであり、相続人ごとに与えられた控除ではありません。

 

法定相続人の人数によって基礎控除額は変化するので、被相続人の相続財産が同じ金額であったとしても、相続人の人数が多い家庭は基礎控除額が多くなり、納める相続税も少なくなります。

 

なお相続税の基礎控除額は、亡くなった時点の法律で決まるため、生前に相続税対策を行う場合、相続財産が基礎控除額以内に収まるのであれば対策を講じる必要はありません。

 

 

 

相続税の基礎控除額の計算方法

 

相続税の基礎控除には控除額を算出する計算式があり、被相続人の相続人の人数をあてはめて控除額を算出します。

 

 

⚫︎相続税の基礎控除額の計算式

3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)=相続税の基礎控除額

 

 

相続税の基礎控除額は相続財産全体に対して控除するため、相続財産の総額が基礎控除額以内であれば、相続人間でどのように遺産を分けたとしても、相続税はかかりません。

 

 

例:法定相続人が3人いる場合の基礎控除額は4,800万円

 

※被相続人の相続財産が基礎控除額4,800万円以下に収まる場合、相続税は無税となります。

 

 

 

 

遺産相続を取得できる相続人の範囲(優先順位)

 

 

相続順位  血縁関係者

 

第1順位 子(代襲相続人(孫、曾孫など)を含む)

 

第2順位 直系尊属(父母、祖父母など)

 

第3順位 兄弟姉妹(代襲相続人(甥、姪)を含む)

 

被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず法定相続人になり、血縁関係者は相続する権利の優先順位が決められています。

 

優先順位の高い相続人が存在する場合、下位の血縁関係者は相続人にはなりませんが、相続順位の高い血縁関係者が不在だと、相続順位はその下の血縁関係者へ移る仕組みです。

 

たとえば被相続人に子がいなかった場合、相続権は第2順位の直系尊属に移ります。

 

また子がいなく、両親や祖父母も相続開始前に亡くなっているときは、第3位順位の兄弟姉妹が相続権を得ます。

 

 

 

 

||相続税の基礎控除額を計算する際の注意点||

 

 

相続放棄があった場合

 

家庭裁判所で相続権の放棄手続きを行い、相続財産を取得する権利が失われた状態をいいます。

 

相続放棄は家庭裁判所の手続きが必要となるため、遺産分割協議で相続財産を何も取得しない人は、相続放棄をしたことにはなりません。

 

通常、相続放棄した人は法定相続人から除かれますが、相続税の基礎控除額の計算においては、相続放棄がなったものとしてして基礎控除額の計算を行います。

 

 

 

 

法定相続人に養子がいる場合

 

 

被相続人の養子も法定相続人に該当しますが、基礎控除額の計算では次の区分に応じて、「法定相続人の数」に算入する養子の数が制限されます。

 

相続税の基礎控除額での養子の人数制限

被相続人に実子がいる場合 1人

被相続人に実子がいない場合 2人

 

たとえば法定相続人が配偶者と養子2人の場合、実子がいないので基礎控除額を計算する際の法定相続人は3人です。

一方、相続人が配偶者と実子2人、養子2人の場合、基礎控除額の計算に算入できる養子の人数は1人なので、法定相続人の人数は4人として計算します。

 

 

相続税の計算方法

 

相続財産が基礎控除額以内であれば、相続税を支払う必要はありませんが、基礎控除額を超えている場合、相続財産を取得した人がそれぞれ相続税を納めることになります。

 

 

続税を計算するためには下記の手順を踏む必要があります。

 

相続税の課税対象となる財産とその金額を出す

課税遺産総額(相続税の対象となる金額であり、課税価額の合計額から相続税の基礎控除を差し引いた金額)を出す

法定相続分に応じた取得金額を算出し、相続税率をかける

各法定相続人の算出税額の合計を出す

 

 

課税価格の合計額の算出方法

 

課税価格の合計額とは、プラス財産とマイナス財産を合計し、基礎控除額を差し引く前の金額です。

 

遺産総額の計算式

本来の相続財産+みなし相続財産-マイナス財産=課税価格の合計

 

相続税の課税対象となる財産とは

相続税の対象となる財産には、「本来の相続財産」と「みなし相続財産」の2種類あります。

 

みなし相続財産:生命保険金や退職手当など

 

 

相続税の課税遺産総額の算出方法

 

課税遺産総額は相続税の対象となる金額であり、課税価額の合計額から相続税の基礎控除を差し引いて算出します。

 

課税遺産総額の計算式

課税価格の合計額 - 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)=課税遺産総額

 

課税価格の合計額が基礎控除額以内であれば、相続税の対象となる金額はゼロなので、相続税を納める必要はありません。

 

課税遺産総額が発生した場合、課税遺産総額に各法定相続人が民法で規定する法定相続分を乗じて、各取得金額を算出します。

 

 

法定相続分の割合

 

法定相続人

 

配偶者と子 配偶者は2分の1、子は2分の1

 

配偶者と直系尊属 配偶者は3分の2、直系尊属は3分の1

 

配偶者と兄弟姉妹 配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1

 

 

相続税の税率と計算方法

 

法定相続分に応じた取得金額を算出しましたら、それぞれの金額に応じて相続税の税率を乗じます。


そして算出された各相続税額を合計すると、相続税の総額が計算されます。

 

相続税の計算式

法定相続分に応じた各法定相続人の取得金額 × 税率=算出税額

各法定相続人の算出税額の合計=相続税の総額

 

相続税の税率

 

法定相続分に応ずる取得金額 税率  控除額

1,000万円以下       10%   ー

3,000万円以下       15%  50万円

5,000万円以下       20% 200万円

1億円以下         30% 700万円

2億円以下         40% 1,700万円

3億円以下         45% 2700万円

 

 

 

 

いかがでしたか。

 

相続税はまず最初に基礎控除を計算しましょう。

 

相続財産の総額が基礎控除額以内であれば、相続税を支払う必要はありませんし、相続税の申告も不要です。

 

一方で、相続税の基礎控除額を超える財産がある場合には、相続が発生した日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納税手続きが必要です。

 

相続税には評価額を最大80%減額する「小規模宅地等の特例」や、配偶者の取得した財産を最低1億6千万円まで無税にする「配偶者の税額軽減」など、多くの節税制度が用意されています。

 

 

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