不動産の相続に必要な手続きは?

2023年11月12日

相続が発生すると、さまざまな手続きが必要になります。

特に不動産を相続する場合、どのように相続すれば良いか分からない方も多数います。

不動産を相続する可能性がある場合、あらかじめ不動産の相続手続きを理解しておきましょう。

ここでは、不動産を相続する流れや方法だけでなく、相続登記にかかる費用や必要書類などをお伝えします。

 

 

 

||不動産を相続するまでの流れ||

 

まず、相続が発生してから相続税の申告・納付までの流れをご紹介します。

 

 

 

遺言書の確認

 

相続が発生したら、初めに遺言書を探します。遺言書があれば、基本的には遺言書に記載されている内容に従って相続が行なわれます。まずは、遺言書があるか確認しましょう。

なお、遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合、優先するのは遺言書です。

 

 

 

相続人の確定

 

できるだけ早めに相続人を確定させます。

誰が相続人かを特定するためには、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本を取り寄せて調査します。

もしも新たな相続人が後から発覚した場合には、遺産分割協議のやり直しが基本的に必要になるため、しっかり調査しましょう。

 

 

 

財産を特定し財産目録を作成

 

相続人を確定させる作業とともに、被相続人の財産を特定して財産目録を作成します。

相続財産に不動産があるかどうかは、市区町村から届く固定資産税の課税明細書に記載があります。

さらに、課税明細書を発行した市区町村の役所(東京23区は都税事務所)で「名寄帳」の写しを取得すると、その市区町村で被相続人が所有する不動産の情報を確認することができます。

 

 

 

遺産分割協議

 

遺言書があれば原則として遺言書の内容に従って相続しますが、遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行います。

遺産分割協議で分割内容の合意が得られたら、不動産をはじめとする財産を誰がどのように相続するかを記載する遺産分割協議書を作成します。

 

 

 

相続財産の名義変更

 

不動産の相続登記を行います。

不動産を相続する際には、相続登記をすることで被相続人から相続人に名義が変更されます。相続登記には、登記事項証明書など書類がいくつか必要ですので、事前に準備しておきましょう。

 

 

 

相続税の申告・納付

 

相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内となっています。期限内に申告・納付できなければ、相続税に関する特例が適用できなかったり、無申告加算税や延滞税がかかりますので注意が必要です。

 

 

以上が相続が発生してから相続税の申告・納付の流れになります。

 

 

 

 

||相続税の計算式||

 

相続税の計算の流れは以下になります。

 

 

①正味の遺産額を計算

 

正味の遺産額:全ての財産ー非課税財産ー債務等+一定の贈与財産→A

 

・不動産、預貯金、現金、株式など相続の対象となる財産を全て洗い出します。

・相続税の対象とならない非課税財産を除きます。

(非課税財産は、お墓や生命保険、死亡退職金の一定部分など)

・被相続人の借金、未払い金、葬式費用などを差し引きます。

・相続開始前3年前の贈与財産および相続時生産課税制度の対象となった贈与財産がある場合は加算します。

 

 

②基礎控除額を計算

 

基礎控除額:3000万円+600万円×法定相続人の数→B

 

 

③課税遺産相続(相続税の対象となる財産)を計算

 

課税遺産総額:正味の遺産額(A)-基礎控除額(B)→C

 

 

④課税遺産総額を法定相続割合で割る

 

③で求めた課税遺産総額(C)を法定相続分どおりに相続したと仮定し、各相続人の法定相続割合の相続財産を算出します。

 

 

 

⑤法定相続分に応じた相続税額を計算し、相続税の総額を算出

 

④で算出した相続財産に応じた相続税率をかけて各法定相続人別に相続税額を計算し、それを合計して相続税の総額を算出します。

 

 

 

⑥実際に相続した財産割合で税額を按分

 

実際に取得した正味の遺産額の割合に応じて⑤で算出した相続税の総額を按分し、各人に割り振られた相続税額から、配偶者・未成年者などの税額控除が該当する場合は、それぞれに応じた控除をします。

 

 

 

 

||不動産を相続する方法||

 

大きく4つに分けられます。

これらの方法について具体的に見てみましょう。

 

①現物管理

 

不動産を含む財産をそのままの形で相続する方法です。

例えば、相続する不動産が2つあり、相続人が2人で現物分割する場合、不動産を1つずつ相続するなどがこれにあたります。

不動産を売却して売却代金を相続する方法などに比べると手続きが簡単ですが、評価額の異なる不動産を現物分割する場合、評価額の低い不動産を相続した人が不満に思う可能性が出てきます。

 

 

 

②代償分離

 

現物で相続財産を取得した相続人が、他の相続人に対して、代償財産を支払う方法です。

例えば、被相続人の子ども2人が相続人で、相続財産が評価額5,000万円の不動産のみであれば、代償分割で均等に分けるとすると1人が不動産を相続し、もう1人に対して2,500万円の代償金の支払い、または他の財産を交付することになります。

当事者間で合意ができれば代償金または他の財産の額は均等である必要はありません。

 

 

 

③換価分割

 

不動産を売却して現金化し、それを相続人で分割して相続するのが換価分割です。

例えば、不動産の売却価格が3,000万円で相続人の子ども3人で均等に分割する場合、1,000万円ずつ相続することになります。

 

 

 

④共有名義

 

不動産の相続方法として、複数の相続人が共有名義で相続するという方法もあります。共有名義にする場合は、各相続人が所有する割合を持分割合として設定し登記します。

なお、不動産を複数の相続人が共有名義で相続すると、共有名義とする場合は、十分に検討することをおすすめします。

 

・相続人のひとりが単独でその家に住む場合、他の相続人は明け渡し請求できない。

・不動産を処分する場合、共有者全員の合意が必要になる。

・固定資産税の支払いについて、支払わない者がいると相続人間に連帯納付義務が生じる。

・共有者の一人に相続が発生すると、その相続人の配偶者・子どもが相続人となるため共有者が増えトラブルを誘発しやすくなる。

 

 

 

||不動産の評価方法||

 

不動産を相続する際には、不動産の評価額を確認する必要があります。

相続税申告の不動産評価額は、購入時の価格や建築費用ではなく時価で計算します。

しかし、相続税などの申告にあたり、土地などについて時価を把握することは容易でないことから、相続税などの申告を容易にして課税の公平を図る観点から、国税局(所)では 毎年、全国の民有地について、土地などの評価額の基準となる路線価および評価倍率を定めて公開しています。

不動産評価額の基準となるのは、土地であれば基本的には路線価で、家屋であれば固定資産税評価額です。

 

 

土地の評価方法

 

土地の評価額は、基本的には路線価を基準とする路線価方式で評価しますが、路線価がない地域は倍率方式で評価します。

 

 

 

路線価方式

 

路線価とは、土地が面する道路ごとに設定された土地の価格で、国税庁の路線価図・評価倍率表で調べることができます。この路線価を基準に評価額を算出する方法を路線価方式といいます。

路線価に、面積や道路からの奥行きによって価格を補正する奥行価格補正率などを掛けることで、その土地の評価額を計算することができます。

 

 

倍率方式

 

倍率方式は、路線価が設定されていない土地の評価額を算出する方法です。固定資産税評価額を基準に、その土地に設定された倍率を掛けて評価額を算出します。倍率も、国税庁の路線価図・評価倍率表で調べられます。

 

 

 

家屋の評価方法

 

家屋は、固定資産税評価額がそのまま相続時の不動産評価額になります。固定資産税評価額は、毎年送られてくる課税明細書に記載されていますが、手元に課税明細書がない場合は市区町村役場の窓口で確認しましょう。

 

 

 

 

||相続登記にかかる費用||

 

不動産を相続する際には、相続税以外にも相続登記に関する費用がかかります。

具体的にどのような費用がかかるのかを解説します。

 

 

 

登録免許税

 

相続登記には、登録免許税を支払う必要があります。相続登記での登録免許税額は、固定資産税評価額の下3桁を切り捨て、それに税率の0.4%を掛けて算出した金額です。算出した金額の下2桁は切り捨てます。

 

 

 

登記事項証明書などの費用

 

相続登記には、登記事項証明書や戸籍謄本、住民票などの書類を取得する費用や、書類を法務局へ送付するための郵送費なども必要です。

登記事項証明書を法務局の窓口にて書面で交付請求する際の手数料は、不動産1件につき600円です。

 

 

 

以上、不動産を相続する流れや方法だけでなく、相続登記にかかる費用をお伝えしました。

具体的な計算方法や相続税について詳しく知るには、不動産業者や税理士など専門家を頼ることもおすすめです。